ぶらり旅 Vol.11(中津)




2001年度の競馬界重大ニュースの一つといえば、中津競馬の廃止、そして、新潟県競馬の廃止決定という二つの地方競馬の廃止問題であろう。今回はその中津競馬場について取り上げたい。

それはあまりにも唐突であった。2月13日、中津市長による突然の廃止発表。当初は3月末とも言われたが、6月3日で廃止される事となった。

もちろんそれまでに、廃止が予想される競馬場の中の一つに中津の名が挙げられていたことは事実であり、99年度末で約20億5千万円、2000年度は約1億5千万円の赤字が計上されているのだから、一見すると廃止も止むなしの感がある。

しかしながら、2000年度から九州3場(佐賀・荒尾・中津)は連携して、『九州競馬』を立ち上げた。
(1)1本場2場外のサイマル発売
(2)人馬の交流と競走番組の充実
(3)広報宣伝や事務処理の共同化
これらの効果は大きく、中津競馬場の平日売上は前年比120%、99年の単年度赤字が約4億5千万円だったのが、2000年の単年度赤字は約1億5千万円と、約3億円も改善が見られたのであった。

また、中津競馬のお祭りのみならず、地方競馬のお祭りとして定着しつつあった全日本女性騎手招待『卑弥呼杯』は、広域発売のおかげもあって、99年度のメインレースは約5923万円と中津競馬場1競走当たりの売特金額レコードを19年ぶりに更新。そして、2000年度は約7210万円とこれまたレコードを更新し、まさにこれからというところであった。

ところが中津市は、事前に存廃問題に関する検討委員会や対策協議会を設ける事もなく、農林水産省や大分県側と事前に廃止の決定について協議していたのである。役人というのは行動が鈍いくせに、根回しに関しては素早い生き物だ。この独断の事前決定を行なった中津市長の名は鈴木一郎。偶然ながら野球界ではオリックスからマリナーズに移籍したイチローこと鈴木一郎が大活躍したが、似ても似つかぬものである。

さて、独断となると当然反発が予想される。競馬組合事務局や厩舎関係者に事前の相談もない寝耳に水の出来事だったからである。また廃止に伴う補償金は、公営競馬の廃止に伴う補償金の支給などは法律によって定められていないということを理由に当初は一切なし(裁判は先例によって判決が決まる為、春木・紀三井寺の両競馬場廃止の際には補償金を支払っているので、必ず支払わなければならなくなる。まぁ農水省出身っていってもこの程度の知識しかないわけですわ)とされており、「生活保護でも貰え」と発言したのだから余計に始末が悪い。

さらには、写真判定やパトロールフィルムの担当をしていた映像業者が中津市長の行動に不信を表し、4月以降の委託契約を拒否したのである。よって、4月以降の競馬は全て中止に追い込まれ、廃止日の6月3日まで競馬開催がないままの廃止という異例の事態に陥ったのである。

その後廃止見舞金(補償金)に関しては支払いの方向で話が進んではいるものの、2001年度末をもってもいまだ妥結されていない。それというのも、廃止見舞金総額6億円の要求に対し、市は8000万円弱のみの提示と、非常に大きな隔たりがあるからである。
これは無茶な数字かというと、全くそのようなことはない。前回廃止された紀三井寺競馬(S.63.3)では、一人平均、調教師は約2460万円、騎手は1133万円、厩務員は457万円支給されている。
無茶なのは中津市側だというのがわかろう。

中津競馬は、その発足以来約49億円ものお金を市の一般財源に繰り入れているのである。累積赤字額はまだその半分。景気のいい時に内部留保として積み立てることなく、市のお金として使い切ってしまい、赤字になったからといって切り捨てる。女郎のような扱いだ。中津競馬場は廃止になったのではなく捨てられたのだ。

ただ、まぁ、この最中に、「市側に監禁された」と訳のわからんことを叫んでいた競馬サイド側も如何なものかと思うけどね。お馬ちゃんかわいそ〜、ってのもどうかと思うし。





さてさて、そんな中津競馬場を訪れたのは今から2年以上前、平成11年8月14日のこと。この時は、荒尾〜中津〜小倉〜佐賀と九州四連チャンで一気に巡るもので、天国というか地獄というかよくわからない旅であった。

これまでぶらり旅では、ゴール板、誘導馬、騎手、スタンド、パドック、食事etcお決まりの写真を取っているのだが、今回のためにあらためてアルバムを見てみると、2年前はあまり写真を取っておらず、また写しどころが違う為、この2年間で地方競馬に対する思いが大きく変わったのだなぁ、と思う反面、何故か小田部雪騎手の写真が多く、スケベ心は少しも変わっていないのだなぁ、としみじみさせられた。

前日の荒尾競馬を終えた後、小倉で一泊し、中津へ向かった。JR小倉駅から特急”にちりん”で日豊本線の中津駅まで約35分。駅前からは無料バスが一本と路線バスが出ていたが、3人でタクシーに乗って競馬場に向かった。



入場門

真ん中に写っているのは...

「あなた、誰?」
「ハナテン中古車センタ〜♪」



7月20日から8月17日までの開催期間中は「なかつ競馬サマーフェスティバル」ということで、様々なプレゼントや催しが行われていました。当日は、

・浴衣入場者!ゆふいん地ビールプレゼント
・ミニ縁日(ヨーヨー、綿菓子など)
・ゆふいん地ビール
・ゆふいん温泉宿泊券ペアプレゼント

となっていましたが、浴衣いうてもねぇ。こんなけったいな格好してるわけやし(笑)。



専門誌売り場

入場門横にあります。左から「競馬勝馬社」「ゴールデンホース」「競馬ファン」「中津ダービー」で各500円。今回は「競馬ファン」を購入。B4ぐらいの大きさで、開くと一枚ものに。

ページ的には4ページあるのだが、そのうち出馬表のあるのは3ページ分。だから正直言って量も少なく、過去の戦績なんか何書いてあるかわからんし、各馬に対するコメントも短い。



早速購入した新聞で小田部雪の出るレースは...とチェックすると1Rから乗っているではないかいな。「いきなり勝負じゃあああああっ」、と思ったけど4着になってしもた。まぁ最初やしね。

んっ?、何?、単勝が特払い?、誰も買うてへんのかいな1着の馬を。いかんとよ。わしは買うてるぞ雪ちゃんの乗ってる馬を。

...おっ!、...ということは、うはぁっ、70円戻ってくるぞ!。「♪大(お〜お)島(し〜ま〜)屋〜のり、エヘヘッ」って感じでちょっぴり嬉しい。なんかようわからんけど、特払いなんかなかなか経験でけへんからまぁええか。







では、競馬場の紹介を。


走路 右回りダートコース
1周 1000M
直線 195M
幅員 20〜25M
入場料 100円
馬券 単・複・枠単・枠複・馬複の計5種類
フルゲート 10頭
スタンド スタンドは2棟に分かれているがきれいな方がメインスタンドで、平成2年の台風で屋根がふっ飛んで建て替えられたらしい。3階部分が指定席(400円)。
最大収容者数 約5,000人
主要レース ●サラ系/7月:中津ダービー(旧4歳)、8月:中津記念、11月:中津王冠、1月:中津大賞典
●アラ系/5月:アラブ王冠、8月:アラブ大賞典、9月:アラブ優駿(旧4歳)、11月:中津菊花賞、1月:アラブ新春杯、2月:ガーネット特別、3月:アラブチャンピオン
※12月:全日本女性騎手招待卑弥呼杯
アクセス ■無料バスが1本<宇佐駅前9:30→高田9:38長洲9:46小松橋9:48四日市10:00南敷田10:10中津駅10:30競馬場10:45>。中津駅前からの路線バスもあり。

■中津駅前からタクシーで約10分。
場外馬券売り場 ドリーム中津(ゆめタウン中津1階)
歴史 1948年公営化。56年組合発足。
一言 九州の玄関口小倉と温泉で有名な別府のちょうど中間に位置する中津市は、1万円札の肖像画となっている福沢諭吉ゆかりの地である。春、桜に囲まれた競馬場は、麗谷邪馬渓同様美しい名勝地といえよう。







お昼御飯ですが、食堂は入場門をくぐって左手側に並んでいましたが、今回は特設テントの方に「ゆふいんビール」が売っているのでそちらの方に行ってみました。

ビールは普通のんと黒の2種類が売っており、テントの前に行くと、


「どっちにしましょ」

う〜ん、どっちがおいしいんですか?

「黒はコクがあって、普通のはキレがある感じかな。さっき試しに両方飲んでみたけど、私は黒の方がおいしいと思ったけどねぇ」

(おい、おばはん、ビール飲みながら仕事してるんかいな。それやったらわしにバイトさせんかい!<(注)この時家主はプー太郎中>)


まぁ、一応その言葉を信じて飲んでみたけど、ほんまに旨かった。実を言うと黒ビールは好きではなかったのだけれど、なるほど確かにコクがあって旨かった。一緒に買ったソーセージも旨かった。「あー、恩地かった。恩地う〜どん」(by.浜村淳)
どちらも十分にGV以上の価値はあった。



パドック

パドックの向こうの壁には、「さわやかロマン 中津競馬」のキャッチコピーが。



小田部雪騎手

ちょいとかわいくて、腕もソコソコあるということで人気のある女性ジョッキー。気はきつそうやけどね(笑)

この時点では、リーディング14人中9位、連対率は6位ということで頑張っていました。

本日の結果は、[0・2・2・1]となかなかのものでした。

服色:胴白 桃星散らし 袖桃







本日のメインレース、第9競争は、第24回アラブ大賞典(アラ系4歳以上OP、1760M)です。


ツキノポイント 牝5 55 有馬 園田〜中津。転入後、[4・2・0・0]
重賞実績なし
イエローホーマー 牡10 54 高山 福山〜高崎〜盛岡〜中津
’94新春杯A<福山>、福山菊花賞A<福山>
’93キングCA<福山>
’92ヤングチャンピオン<福山>
ホクトバルホン 牡7 56 安東 園田〜中津
重賞実績なし
× ブロンドラブリー 牝6 52 杉村 上山〜福山〜中津
’97クイーンCA<福山>
ヨウメイカイカ 牝10 51 小田部 水沢〜名古屋〜中津
’95オーガストスプリントA<名古屋>
マイルリュウオー 去9 56 服部 園田〜佐賀〜盛岡〜中津
重賞実績なし
ニシケンセイホー 牝8 54 高知〜中津
’99アラブ新春杯A、ガーネット特別A
’98アラブ王冠
’97アラブ新春杯A
’96アラブ大賞典、中津菊花賞A
ライデンヒリュー 牡7 56 尾林 園田〜盛岡〜名古屋〜佐賀〜金沢〜園田〜中津
重賞実績なし
スマノカウント 牝6 54 笠田 園田〜中津
99アラブ王冠

↑競馬ファンの予想


レースはスタート良く先手を奪ったツキノポイントがそのままゴール。2番手から追走したスマノカウント、中団からじりじりと伸びたヨウメイカイカが続いてゴールしました。



⇒1着:ツキノポイント、2着:スマノカウント、3着:ヨウメイカイカ





ツキノポイント

翌年のアラブ大賞典でも2着と活躍。
中津廃止後は益田競馬場へ移籍し、現在も現役で活躍中。



廃止後の騎手の行方です。


秋山 剛 北海道
有馬 澄男 園田(厩務員)
安東 章 佐賀
石川 浩文 佐賀
尾林 幸彦 荒尾
笠田 敏勝 荒尾
小田部 雪 荒尾
櫻木 英喜 大井(厩務員)
佐藤 智久 荒尾
下田 雅春 笠松
杉村 一樹 荒尾
高山 伸一 荒尾
服部 茂史 北海道
細川 直人 北海道
森田 直哉 佐賀


騎手に関しては何とか全員の移籍先が決定しました。しかし、調教師等に関しては残念ながらわかりません。
この中で特筆なのは有馬澄男騎手(44)ではないでしょうか。

中津最年長のこのジョッキーは、「若い者の移転先が決まるまでは」ということで最後の最後になってようやく園田への移籍が決まったのです。といってもこの園田では騎手ではありません。厩務員としてのスタートです。

園田では、今まで他場からの移籍でいきなり騎手として出発した事はない、というわけのわからない規定の為、騎手免許を返上し、西脇の溝橋厩舎に所属し、2002年の騎手免許試験合格を目指して調教厩務員として働く事になりました。3500勝もしたジョッキーが調教厩務員ですよ。

全国の2000勝以上のジョッキーを集めて行われる園田の「ゴールデンジョッキーカップ」では第4回(’92)優勝、第7回(’95)3位と素晴らしい成績を収めているのに調教厩務員から始めなければいけないとは非常にバカげた話です。騎手免許試験合格のあかつきには小牧太や岩田や園田の連中を蹴散らして頑張ってもらいたいものです。



 



さて、競馬場の廃止とはどういう意味を持つのでしょうか。
ここ中津からは300頭ほどの馬が姿を消しました。日本の現役競走馬の1、2%程度でしょうか。しかしながら、わずかといえども不意に淘汰されたのです。今後は中津競馬場分、長い目で見ると何千頭という数の馬産が不要となったわけです。
富士山は何故日本一高くて雄大な姿をしているのでしょう。それは広大な裾野があるからです。広大な裾野がその頂きを支えているのです。競馬界でもその裾野が広いから故に幾多の競争が行われて頂点が高くなり、そして遂には海外でも勝利する馬が出てきているわけです。馬産の裾野が狭まればそれは日本の競馬界の頂点が低くなるということです。
日本の競馬は法律により公営しか認められていません。民営では行えないのです。つまり、一旦廃止されればほぼ100%再興というものはありえません。経済のみならず競馬界も地盤沈下するのでしょうか?

小さい頃に遊んだ原っぱや公園は姿を消し、大きくなった今は競馬場という大人の遊び場が姿を消し、コンクリートばかりですね。

今となっては、一緒に行った某M氏が、買ったばかりのエルコンドルパサーの携帯ストラップの馬の部分だけを場内で落としたり、泊りがけで旅行に行くのにパンツを持っていくのを忘れたからといって駅前のスーパーでパンツを探してウロウロしていたのもいい思い出です(笑)。
まだ2年ちょっとしか経っていないのにね。

ともあれ、中津競馬に所属していたみなさん、以前に移籍された方、そう、高知の中西達也騎手も中津からの移籍ですね、みんなみんな頑張って下さい。そして有馬騎手が園田で復活された折には応援に行きたいと思います。



真ん中に写っているのは...

「あなた、車売る?」

「ハナテン中古車センタ〜♪」



〒871−0153  大分県中津市大字大貞371  Tel 0979−32−2353 




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